自費出版の販売方法

自費出版の販売方法は、主に販売委託です。自費出版で販売委託する場合は、販売委託支度金・販売手数料・在庫管理保管料の3つが制作費用とは別に必要です。
販売委託支度金は、自費出版本の委託販売に関する契約を交わしたのちに、名義料や流通諸経費として自費出版本の発売元に支払います。金額は契約の内容や期間によって変わりますが、相場は10~20万円前後です。
販売手数料は、自費出版本の販売委託期間終了後に精算します。自費出版本の販売を委託すると契約書に基づいて契約期間中自費出版本が委託販売され、契約期間ごとに自費出版本の出荷部数が発売元から報告されます。その実際に出荷された自費出版本の部数から、取次・書店の手数料に加えて発売元の手数料が販売手数料として差し引かれます。相場は自費出版本の定価×部数の数十パーセントです。
その他に販売委託期間中の自費出版本の倉庫代として在庫管理保管料が必要で、自費出版本の販売委託期間終了後に精算します。
また自費出版本の販売委託期間終了後には残本の処理費用として、自費出版本の引取りにかかる運賃や断裁処分費用が必要となる場合があります。こうした費用の詳細は通常販売委託契約書に記載されているので、契約時に確認しておく必要があります。
共同出版の場合は書店での自費出版本の販売に加えて新聞紙上やインターネット上での宣伝がされる場合が多いです。しかし一冊の本にかけられる広告宣伝費は本の定価の10%が相場であり、自費出版本では発行部数が少ないため広告費も少なくなります。また自費出版の場合、広告・宣伝費用は著者負担となり別途請求されるケースもあるため注意が必要です。


自費出版の流通

本の流通は一般的に、出版社→取次→書店→読者というルートをたどります。書店やネットを通じて一般の人が自費出版本を購入できるよう自費出版本を流通させたい場合には、取次に口座を開設している出版社から自費出版本を出版するか、自費出版本の流通会社に依頼する必要があります。
取次と書店の取引方法には委託配本・注文納品・買切の3種類がありますが、出版した自費出版本がどのような形態で取引されるかは、出版社や本の内容、実際に交わした自費出版本販売に関する契約の内容によって変わります。
委託配本の場合は、書店からの注文を受ける前に取次が自費出版本を書店に配本します。書店で売れなかった場合、自費出版本は返品されます。委託配本ができるのは新刊発行時の1回だけで配本期間は原則的に半年ですが、実際には1か月目から約1年間に渡って自費出版本が返品されてきます。自費出版本が返品されると流通経費に加えて倉庫代もかさみますので、自費出版本が売れなかった場合には赤字が大きくなります。返品率は商業出版でも50%を超えているのが現状ですので、この点はよく心得ておきましょう。
注文納品は、書店が取次会社に注文し、その冊数分の自費出版本を書店に納品する形態です。基本的には委託配本によって配本された自費出版本が売れた場合の補充注文として発生しますが、注文納品のみの契約だった場合は注文されない限り自費出版本が書店に並ぶことはありませんので注意しましょう。
買切は書店が自費出版本を買い取る形態です。買い取った自費出版本は原則返本不可となるため、書店にとってはリスクの高い方法です。


自費出版の本をアマゾンで売る

自費出版本をアマゾンで販売するには、「e託販売サービス」を利用します。e託サービスを利用して自費出版本を販売するためには、e託サービスへのアカウント登録と自費出版本に付与するISBNコード・JANコードの取得が必要です。e託サービスの年会費は9000円、自費出版本に付与するISBNコードの取得は10書名分で21000円、同じく自費出版本に付与するJANコードの取得は3年間分で10500円、合計で40500円かかります。
自費出版本を販売するためのe託サービスへのアカウント登録後にはアマゾンによる審査があり、自費出版本販売の承認または拒絶の通知が届きます。自費出版本販売を承認された場合は初回数量分の自費出版本納入依頼がEメールによって行われます。自費出版本の追加納入依頼についても同様にEメールで行われます。
自費出版本の価格に関しては、拘束力のない希望小売価格を提案することはできますが、実際の小売価格はアマゾンの単独裁量によって行われます。そして自費出版本の売上は、参加登録画面で登録した銀行口座への振込によってのみ行われます。
自費出版本販売のためのe託サービス利用契約の終了を希望する場合には、30日前までに電子メールを含む書面にて終了通知を行う必要があります。自費出版本販売のためのe託サービス利用契約を終了した場合、在庫として残った自費出版本は合意された価格にてアマゾンが購入するか、利用者側の費用負担で自費出版本を返却・現金化または破棄されます。どの方法を選択するか決める権利はアマゾン側にあります。
また自費出版本の顧客の需要が不十分である等の理由でアマゾン側によって削除が適切であると判断されると、登録した自費出版本はプログラムから削除され、利用者側の費用負担で自費出版本を返却・現金化または破棄されます。
アマゾンで販売をしたから自費出版本が売れるというわけではありません。自費出版本を売るためには、アマゾンで自費出版本の販売を開始した後もtwitterやサイトでの宣伝活動が必要でしょう。


自費出版本の販売

自費出版本の販売契約を出版社と交わす場合は、自費出版本の販売方法が「委託販売」なのか「注文販売」なのかを確認しましょう。
「委託販売」とは取次会社が書店へ新刊本を配本する形式です。配本された新刊本は各書店の判断で平積みされたり棚差しされたりしますが、中には荷ほどきもされないまま返本される場合もあります。
一方「注文販売」とは書店からの注文があった場合のみ出荷する形式です。注文販売のみの契約の場合、注文がない限り自費出版本は書店に並びません。
今日では著名な作家の本さえあまり売れなくなっているため、あまり知られていない著者の自費出版本を売ることは非常に難しいと言えます。したがって自費出版した本の売上で利益を得たり自費出版本の出版代を回収したりすることは不可能だと考えた方が良いでしょう。 
市販を目的とする自費出版本に向いているのは、「趣味・技芸・コレクション」の分野です。これらの自費出版本は見込み客が限られていても、本の内容の希少性という観点から自費出版本の購買者の獲得はかなり期待できます。反対に自分史や随筆・社史・郷土史などの自費出版本は販売が難しいと言えます。
例外的なケースとして、NPOや法人などの組織に自費出版本の著者がかかわっている場合や、自費出版本の著者がインターネット上でメルマガやMLなどのネットコミュニティーを運営している場合などは、口コミで自費出版本を販売できるので購買者を獲得できる可能性は高いと言えます。
自費出版本を市販する場合は、自費出版を依頼する出版社でも自費出版本の広告・宣伝を行ってもらうことはできますが、ブログやツイッター・mixiなどで自ら自費出版本の宣伝をするなどの努力が必要です。また地域のコミュニティ情報誌や新聞・地方自治体の広報誌などに自費出版本の広告や記事を載せてもらえるよう働きかけてみるのもよいでしょう。


自費出版のISBN

ISBNは日本図書コード管理センターが発行しているもので、書籍を識別するための国際的な規格です。法令などで付けなくてはならないと決まっているわけではないため、自費出版本の出版に際しても必ず取得しなければならないものではありません。したがって著者自身が読者に直接自費出版本を販売・頒布する場合にはISBNコードは必要ありません。しかし自費出版本を書店やネット書店で市販するのであればISBNコードを自費出版本に付けることを求められるでしょう。また自費出版本を市販しない場合でも、図書館へ自費出版本を寄贈するにはISBNコードを自費出版本に付与する必要があります。
ISBNは13桁からなるコード番号によってあらわされ、自費出版本を含む書籍出版物の書誌(書物の体裁・内容・成立の事情など)を特定する役割を持っています。固有の発行形態と書名をもつ書籍を識別するものであるため、同一のISBNコードを持つ書籍が2つ存在することはなく、また同一の書籍に異なる複数のISBNコードが付与されることもありません。
自費出版本にISBNを付与する場合、ISBNコードは個人でも取得可能です。しかし登録料と国際本部分担金を合わせて17850円がかかるので、複数冊の自費出版本出版を予定している場合以外は自費出版本の出版を依頼する会社が保有しているコードを自費出版本に使用させてもらうのが一般的です。
自費出版本を流通させる為には、ISBNコードとともにJANコードを自費出版本に表記して発行する必要があります。JANコードはISBNコードと同様に日本図書コード管理センターが発行しており、10500円で三年間分の申請ができます。


自費出版の基礎知識

Copyright (C) 自費出版の基礎知識 All Rights Reserved.